測度の正則性 | Regularities of Measures on Topological Spaces

Functional Analysis
Author

司馬博文

Published

1/05/2024

Abstract
位相空間上の測度の正則性に関連する概念をまとめる.

1 有界測度の基本概念

定義1 (\(\mu\)-inner regular, Radon, tight, regular)

\(X\) を位相空間,\(\mu\in\mathcal{S}^1(X)\) を有界な符号付き Borel 測度とする.2

  1. Borel 集合 \(B\in\mathcal{B}(X)\)\(\mu\)-内部正則 であるとは, \[ \lvert\mu\rvert(B)=\sup_{K\overset{\textrm{cpt}}{\subset}B}\lvert\mu\rvert(K) \] を満たすことをいう.すなわち,任意の \(\epsilon>0\) に対して,あるコンパクト部分集合 \(K\overset{\textrm{cpt}}{\subset}B\) が存在して, \[ \lvert\mu\rvert(B\setminus K)<\epsilon \] を満たすことをいう.3

  2. \(\mu\)Radon であるとは,任意の Borel 集合 \(B\in\mathcal{B}(X)\)\(\mu\)-内部正則であることをいう.4

  3. \(\mu\)緊密 であるとは,全体集合 \(X\)\(\mu\)-内部正則であることをいう.5

  4. \(\mu\)正則 であるとは,任意の \(\epsilon>0\) に対して,ある閉集合 \(F\overset{\textrm{closed}}{\subset}X\) が存在して,\(F\subset B\) かつ \[ B\setminus F\in\mathcal{B}(X),\quad\lvert\mu\rvert(B\setminus F)<\epsilon \] を満たすことをいう.

2 Riesz 正則性

変種

\(X\) を位相空間,\(\mu\in\mathcal{S}^1(X)\) を有界な符号付き Borel 測度とする.

  1. Borel 集合 \(B\in\mathcal{B}(X)\)\(\mu\)-外部正則 であるとは, \[ \lvert\mu\rvert(B)=\inf_{B\subset U\overset{\mathrm{open}}{\subset}X}\lvert\mu\rvert(U) \] を満たすことをいう.6

  2. \(\mu\)Riesz 正則 であるとは,任意の Borel 集合 \(B\in\mathcal{B}(X)\)\(\mu\)-外部正則かつ \(\mu\)-内部正則であることをいう.

この Riesz 正則という語用法は筆者限りのものである.(Halmos, 1950, p. 224), (Dunford and Schwartz, 1958, p. 137), (Folland, 1984, p. 205), (Lang, 1993, p. 265), (Conway, 2007, p. 380) などでは単にこれを regular と呼ぶ.\(X\) が局所コンパクト Hausdorff 空間であるとき,このような語用法の方が一般的である.

さらに,上述のうち4文献で共通するように,非有界な符号付き測度 \(\mu\in\mathcal{S}(X)\) を考える際は,最低限次の条件を課し,これも regular であるための条件に入れる:

  1. \(\mu\)局所有界 であるとは,任意の \(K\overset{\textrm{cpt}}{\subset}X\) 上で有限値であることをいう.
命題7 :内部と外部の正則性

\(X\) を局所コンパクト Hausdorff 空間,\(\mu\in\mathcal{S}^1(X)\) を有界 Borel 測度とする.次は同値:

  1. \(\mu\) は Riesz 正則である.
  2. 任意のコンパクト集合は \(\mu\)-外部正則である.
  3. 任意の有界な開集合は \(\mu\)-内部正則である.

また,\(X\) 上の任意の Baire 測度は Riesz 正則である.

定理8 :Riesz 正則測度の延長 (Alexandroff, 1940, p. 590)

\(X\) をコンパクト空間,\(\mathcal{A}\subset P(X)\) を集合体,\(\mu:\mathcal{A}\to\mathbb{C}\) を Riesz 正則で有界な有限加法的関数とする.このとき,\(\mu\)\(\sigma\)-加法的である.特に,\(\sigma(\mathcal{A})\) 上へのただ一つの \(\sigma\)-加法的な延長を持ち,引き続き Riesz 正則である.

References

Alexandroff, A. D. (1940). Additive set-functions in abstract spaces. Matematiceskij Sbornik, 50(8), 307–348.
Bogachev, V. I. (2007). Measure theory. Springer-Verlag.
Conway, J. B. (2007). A course in functional analysis. Springer New York.
Dudley, R. M. (2002). Real analysis and probability,Vol. 74. Cambridge University Press.
Dunford, N., and Schwartz, J. T. (1958). Linear operators. Part 1: General theory,Vol. VII. Interscience Publishers.
Folland, G. B. (1984). Real analysis. Wiley-Interscience.
Halmos, P. R. (1950). Measure theory,Vol. 18. Springer New York.
Lang, S. (1993). Real and functional analysis,Vol. 142. Springer New York.
Le Cam, L. (1957). Convergence in distribution of stochastic processes. University of California Publications in Statistics, 2(11), 207–236.

Footnotes

  1. (Bogachev, 2007, pp. 68–69) 定義7.1.1, 7,1,4 と (Dudley, 2002, p. 224) に倣った.↩︎

  2. 有界でない一般の符号付き測度に関しては,任意の \(X\) のコンパクト集合上で有限値であることを Borel 測度たる条件に加えることもある,例えば (Halmos, 1950, p. 223) 52節.↩︎

  3. (Dudley, 2002, p. 224) では単に regular と呼んでいるが,(Halmos, 1950, p. 224) に従って inner regular と呼ぶことにした.↩︎

  4. (Halmos, 1950, p. 224) ではこの条件を満たす \(\mu\)正則 と呼んだ.↩︎

  5. (Dudley, 2002, p. 434) によると,最初の tight の定義は (Le Cam, 1957) による uniformly tight の定義であったようである.一点集合 \(\{P\}\) が一様に緊密であることと \(P\) が緊密であることとは同値になる.↩︎

  6. (Halmos, 1950, p. 224) に倣った.↩︎

  7. (Halmos, 1950, p. 228) 定理X.52.F, G.↩︎

  8. (Dunford and Schwartz, 1958, p. 138) 定理III.5.13, 定理III.5.14↩︎