YUIMA 入門
確率微分方程式のシミュレーションと推測のためのパッケージ`yuima`の構造と使い方をまとめます.
司馬博文
6/29/2024
7/01/2024
A Blog Entry on Bayesian Computation by an Applied Mathematician
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$$
YUIMAについては次の記事も参照:
Poisson 過程と言った場合,Poisson 点過程
このとき,
従って,任意の点過程
点過程
(Revuz and Yor, 1999, p. 471) 定義XII.1.1 は違う定義を与えている:
上の点過程とは, 上の確率過程 であって,次の2条件を満たすものをいう:
は -可測である. は殆ど確実に可算である.
(Kingman, 2006) の定義は「
確率核の意味での点過程が,追加で次の条件を満たすとき,真の点過程になる.4 特に,(Revuz and Yor, 1999) と (Kingman, 2006) の意味でも点過程である.
ある可算な分割
が存在して, である.
点過程には「各集合
この強度測度
期待値の線型性より一般の単関数,単調収束定理より一般の可測関数についても成り立つ.
2つの強度測度
このとき,
加えて,
実は Poisson 点過程は,Poisson 分布と同様に,可算な範囲で再生性がある:
従って,実際は
強度測度が有限であるとき,複合二項過程として極めて明瞭な理解ができる.
区間上の Poisson 過程は,一様分布に関する複合二項過程になる.点の間の間隔は指数分布に従う.13
ある
複合二項過程について,次が成り立つ:
特に,
雨がふるという事象が Poisson 点過程に従い,その際の降水量がランダムに決まるため,降水量の時系列は古くから独立付印 Poisson 過程としてモデル化されている (Todorovic and Yevjevich, 1969).19
すなわち,点
この剪定によって,連続なレート関数
実際,yuima
でもこの方法が採用されている(第 1.9.2 節).
アルゴリズムは次のとおりである:
を満たす2つのレート関数を持つ Poisson 過程 を考える. 内の点 を生成し,それぞれの点を確率 で取り除く.すると,残った点は をレート関数にもつ Poisson 過程の分布,すなわち の分布に従う.
最も簡単な場合としては,
すると,定値なレート関数を持つ Poisson 過程
このとき,
また,これらの条件が成り立たないとき,
従って,
加えて,中心化された積分
yuima
パッケージでは,Poisson 計数過程は複合 Poisson 計数過程の特別な場合として扱うため,シミュレーション法は第 2.5 節で扱い,ここでは結果のみを示す.
強度
レート
強度関数
例えば,強度関数
時間が経つごとに強度関数
点過程としての複合 Poisson 過程は,印付けられた Poisson 点過程(第 1.6 節)から構成される.
Poisson 過程
この跳躍の大きさを任意の確率分布
この複合 Poisson 過程は,印付けられた Poisson 過程
これが複合 Poisson 点過程であり,
一様 Poisson 過程は定数の Lévy 測度
一方で,一様な複合 Poisson 過程
従って,Lévy 測度
しかし,一般に Lévy 測度は,
すなわち,有限時区間内では(殆ど確実に)有限回しかジャンプしない純粋跳躍 Lévy 過程は,全て一様な複合 Poisson 計数過程である.30
一般の Lévy 測度を持つ Lévy 過程は,一様な複合 Poisson 部分を跳躍部分にもつ Lévy 過程の,広義
違いに素な
ここでも
特に,
しかし,Lévy 過程に関する確率積分を定義する際,2つの概念は密接に関連する.
というのも,
すなわち,Lévy 過程に関する確率積分とは,Lévy 過程に付随する Poisson 点過程に関する確率積分に他ならない.
上述の定義を,
これは
複合 Poisson 過程はこれを過程に一般化したものであり,Poisson 複合の部分は
第 1.6 節で扱ったような,(一様とは限らない)Poisson 点過程の独立付印の場合が特に重要なクラスである.
これは,Lévy 過程のジャンプ測度が,このクラスの複合 Poisson 点過程になるためである.34
このとき,次が成り立つ:
Campbell の定理 1.3 より,
Lévy 過程(一般に加法過程)は,跳躍部分と連続部分との独立和に分解でき,これが Lévy-Itô 分解である.
跳躍部分は,複合 Poisson 点過程
しかし,Lévy 測度は
これを実際に見てみよう.
強度測度
しかし Lévy 測度は,
一方で
以上より,任意の Lévy 過程
追加で Lévy 測度
すなわち,Lévy 過程の中には,無数の小さな跳躍部分が連続部分が相殺しているために収束しているものがあり,そのような場合は明確に跳躍部分と連続部分に分離できないものがある.
単に複合 Poisson 過程といった場合,通常,ここでいう一様な複合 Poisson 計数過程を指すことが多い.
この
すなわち,複合 Poisson 分布が一様であるとは,背後にある
さらに,Lévy 測度が
一方で,一般の Lévy 分布の跳躍測度は,
このような場合でも,一般の複合 Poisson 点過程
yuima
パッケージには,複合 Poisson 分布専用のコンストラクタsetPoisson
が用意されている.このコンストラクタは2つの引数を持つ:
setPoisson
の引数47
intensity
:強度(関数) df
:跳躍測度 scale=1
:dimension=1
:Poisson 過程はジャンプの大きさが定数1の複合 Poisson 過程であるから,df
としては dconst(z,1)
を指定する.
この場合はsetModel
内でモデルを定義する.
setModel
の引数50
jump.coeff
:measure.type
:CP
と指定することで,measure
引数が複合 Poisson 過程 measure
:intensity
とdf
のリストとして指定する.複合 Poisson 過程
modJump <- setModel(drift = c("-theta*x"), diffusion = "sigma", jump.coeff=c("gamma+x/sqrt(1+x^2)"), measure = list(intensity="lambda", df=list("dnorm(z, -3, 1)")), measure.type="CP", solve.variable="x")
samp <- setSampling(n=10000,Terminal=10)
X <- simulate(modJump, xinit=2, sampling=samp, true.par= list(theta=2, sigma=0.5,gamma=0.3,lambda=0.5))
plot(X)
(Nualart and Nualart, 2018, p. 159) 例9.1.3,(Revuz and Yor, 1999, p. 471) 定義XII.1.3 などは,Poisson 計数過程の方を Poisson 過程と呼んでおり,(Last_Penrose2017?) などは Poisson 点過程の方を Poisson 過程と呼んでいる.(Eberle, 2012, p. 18) では,ここでは点過程とランダム測度を混用しているが,この2つを使い分けている.(Vasdekis, 2021) も,ここでいう計数過程を点過程と呼んでいる.↩︎
(Revuz and Yor, 1999, p. 472) 命題XII.1.4など.↩︎
(Kallenberg, 2017, p. 49),(Last_Penrose2017?) 定義2.1 に倣った.全く同じ概念を (伊藤清, 1991, p. 298) は 偶然配置 と呼ぶ.↩︎
(Last_Penrose2017?) 系6.5 を参照.↩︎
(Last_Penrose2017?) 定義13.5 に倣った.↩︎
(Murphy, 2023, p. 696) 18.4.3 節も参照.↩︎
(伊藤清, 1991, p. 298) に倣った.↩︎
(Last_Penrose2017?) 命題2.7 に倣った.(Campbell, 1909) は元々真空管内の shot noise の研究をしていた.結果の一部は G. H. Hardy にもよるという.↩︎
(Nualart and Nualart, 2018, p. 160) 定義9.2.1,(Sato, 2013, p. 119) 第4章19節,(Resnick, 2002, p. 303),(Sato, 2013, p. 119) 定義19.1,(Last_Penrose2017?) 定義3.1 に倣った.↩︎
(Revuz and Yor, 1999, p. 476) 命題 XII.1.12,(Last_Penrose2017?) 命題3.2 はより一般的な状況で示している.↩︎
(Nualart and Nualart, 2018, p. 160) 定理9.2.2 では,
(Eberle, 2012, p. 19) 定理1.6も参照.↩︎
逆に,指数分布のシミュレーションにより,一様分布の順序統計量が効率的にシミュレーションできる.このことは粒子フィルターにおけるリサンプリングに応用できる.(Chopin and Papaspiliopoulos, 2020, p. 113) 命題9.1も参照.↩︎
(Last_Penrose2017?) 命題3.8も参照.↩︎
(Last_Penrose2017?) 定理7.2参照.↩︎
(Last_Penrose2017?) 定義5.3 に倣った.(Kingman, 1992, p. 55) 5.2節も参照.↩︎
例えば (Kingman, 1992, p. 55),(Last_Penrose2017?) 命題5.5 を参照.↩︎
日本語文献としては,(西村克己 and 江藤剛治, 1981) も参照.↩︎
(Last_Penrose2017?) 定義5.7 に従った.↩︎
(Last_Penrose2017?) 系5.9 参照.↩︎
(Last_Penrose2017?) 命題12.1 参考.↩︎
(Nualart and Nualart, 2018, p. 163) 9.3節,(Last_Penrose2017?) 命題12.4 など.↩︎
(Sato, 2013, p. 123) 定理19.5 や (Eberle, 2012, p. 20) 定理1.7 は強度測度
(Nualart and Nualart, 2018, p. 159) 例9.1.4,(Last_Penrose2017?) 例15.5 など.↩︎
(Applebaum, 2009, p. 50) も参照.↩︎
(Iacus and Yoshida, 2018, p. 171) 4.8.1 節も参照.↩︎
(Resnick, 2002, p. 174),(Mitov and Omey, 2014, p. 1),(Nummelin, 1984, p. 49) 定義4.2 などに倣った.↩︎
(Eberle, 2012, p. 26) 定理1.10 も参照.↩︎
(Kingman, 1992, p. 79) 第8章,(Last_Penrose2017?) 第 15.3 節参照.↩︎
(Last_Penrose2017?) に倣った.↩︎
一様じゃない Lévy 過程,すなわち加法過程の場合は,
(Last_Penrose2017?) も参照,↩︎
(Nualart and Nualart, 2018, p. 162) 例9.2.4 を参考.↩︎
(Nualart and Nualart, 2018, p. 162) 例9.2.4 による用語法.
(Sato, 2013, p. 120) 定理19.2(i) を参照.↩︎
(Nualart and Nualart, 2018, p. 164) 例9.3.1,(Last_Penrose2017?) 15.4節なども参照.↩︎
(Nualart and Nualart, 2018, p. 164) 例9.3.1,(Sato, 2013, p. 120) 定理19.2,(Protter, 2005, p. 31) 定理42 など参照.↩︎
(Sato, 2013, p. 119) が指摘するように,まるで Cauchy の主値積分である.↩︎
ただし,
(Sato, 2013, p. 121) 定理19.3 も参照.↩︎
(Last_Penrose2017?) 例15.14 を参考にした.↩︎
(Iacus and Yoshida, 2018, p. 137), p.158,(Sato, 2013, p. 18) 定理4.3,(Protter, 2005, p. 33) 例2,(Baudoin, 2014, p. 90) 演習3.44,(Applebaum, 2009, p. 49) 命題1.3.11 に倣った.↩︎
(Sato, 2013, p. 20) 命題4.5など参照.↩︎
Lévy 過程が駆動する SDE モデルの定義方法は (Iacus and Yoshida, 2018, p. 191) 4.11.3 節を参照.↩︎