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A Blog Entry on Bayesian Computation by an Applied Mathematician
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1 はじめに
本稿では Lévy 過程 \(\{Z_t\}\) に駆動された SDE \[ dX_t=a(X_t)\,dt+b(X_{t-})\,dZ_t=a(X_t)\,dt+\sigma(X_t)\,dW_t+\int_{\left\{\lvert u\rvert\le 1\right\}}c(X_{t-},u)\,\widetilde{N}(dtdu)+\int_{\left\{\lvert u\rvert>1\right\}}c(X_{t-},u)\,N(dtdu) \tag{1}\] で駆動される確率過程 \(\{X_t\}\) のエルゴード性を議論する.
Lévy 過程 \(\{Z_t\}\subset\mathcal{L}(\Omega;\mathbb{R}^m)\) は拡散項を持たない \(\sigma\equiv0\) とし,跳躍係数 \(c:\mathbb{R}^m\times\mathbb{R}^m\to M_m(\mathbb{R})\) も跳躍幅 \(u\) に関して線型 \(c(x,u)=b(x)u\) で,次の Ito-Lévy 分解を持つとする: \[ Z_t=\int^t_0\int_{\lvert u\rvert\le1}u\widetilde{N}(ds,du)+\int^t_0\int_{\lvert u\rvert>1}uN(ds,du), \] \[ N(ds,du):=ds\,\nu(du),\qquad\widetilde{N}(ds,du):=N(ds,du)-ds\,\nu(du),\qquad\int_{\mathbb{R}^m}\lvert u\rvert^2\land1\nu(du)<\infty. \] ただし \(N\) を強度測度 \(ds\,\nu(du)\) を持つ跳躍を表す Poisson 点過程とした.
Borel 可測関数 \(b:\mathbb{R}^m\to M_{m}(\mathbb{R})\) と \(a:\mathbb{R}^m\to\mathbb{R}^m\) は局所 Lipschitz 連続で,線型増大条件 \[ \lvert a(x)\rvert^2+\int_{\lvert u\rvert\le1}\lvert b(x)u\rvert^2\nu(du)\le K(1+\lvert x\rvert^2),\qquad x\in\mathbb{R}^m, \] を満たすとする.このとき,SDE (1) には一意な強解 \(\{X_t\}\) が存在し,\(X\) は càdlàg な Markov 過程である.1
加えて,\(b\) が有界であるという条件も引き続き課すこととする.
伊藤の公式より,拡張生成作用素 \[ \widehat{L}f(x):=\left(Df(x)\,|\,a(x)\right)+\int_{\mathbb{R}^m}\biggr(f\biggr(x+b(x)u\biggl)-f(x)-1_{B^m}\biggr((Df(x)|b(x)u)\biggl)\biggl)\nu(du),\qquad f\in C^2(\mathbb{R}^m), \tag{2}\] に関して \(M_t^f:=f(X_t)-f(x)-\int^t_0\widehat{L}f(X_s)ds\) で定まる càdlàg 過程 \(\{M^f_t\}\) は任意の \(x\in\mathbb{R}^m\) に関して局所 \(\operatorname{P}_x\)-マルチンゲールである.
拡散過程,例えば Langevin 動力学のエルゴード性証明
との最大の違いは,ドリフト関数 \(V\in C^2(\mathbb{R}^m)\) に Lévy 測度 \(\nu\) に関する可積分条件が加わることにある.そもそも \(\widehat{L}V\) が well-defined であるためには,式 (2) の積分が発散してはならないのである.
このように \(\widehat{L}f(x)\) の値が \(f\) の \(x\in\mathbb{R}^m\) 以外での値にも依存する性質を 非局所性 という.
2 文献紹介
Lévy 過程のエルゴード性の結果については,(3.4節 Kulik, 2018) によくまとまっている.
References
Footnotes
(Ikeda and Watanabe, 1981, p. 245) 定理9.1.↩︎