YUIMA 入門
確率微分方程式のシミュレーションと推測のためのパッケージ`yuima`の構造と使い方をまとめます.
YUIMA パッケージを用いたシミュレーションを通じて
司馬博文
7/01/2024
7/02/2024
A Blog Entry on Bayesian Computation by an Applied Mathematician
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YUIMAについては次の記事も参照:
Poisson 過程と複合 Poisson 過程については次の記事を参照:
確率過程 \(\{X_t\}\subset\mathcal{L}(\Omega;\mathbb{R}^d)\) が 加法過程 であるとは,最初の4条件を満たすことをいう.5条件全てを満たすとき,Lévy 過程 であるという.
加法過程 \(\{X_t\}\) について,\(X_t\) の分布は必ず \(\mathbb{R}^d\) 上の無限可分分布になる.2
加えて,加法過程の分布は1次元の有限次元分布族が特徴付ける.
\(\{X_t\}\subset\mathcal{L}(\Omega;\mathbb{R}^d)\) を加法過程とする.
このことにより,加法過程 \(X\) の分布は,各 \(X_t\) の無限可分分布を特徴付ける特性量 \((A_t,\nu_t,\gamma(t))\) によって特徴付けられる.
特性関数 \(f:\mathbb{R}^d\to\mathbb{C}\) について,次は同値:
\(A\) を Gauss 共分散,\(\nu\) を Lévy 測度,\(\Psi\) を Khintchine測度 という.5
加えて,任意の半正定値行列 \(A\),\(\gamma\in\mathbb{R}^d\),Lévy 測度 \(\nu\) であって \(\nu(\{0\})=0\) かつ \[ \int_{\mathbb{R}^d}(\lvert x\rvert^2\land1)\nu(dx)<\infty \] を満たすものに対して,\((A,\nu,\gamma)\) を特性量にもつ無限可分分布が存在する.
Khintchin の表示はより直接的である上に,Khintchin 測度は有限になる.さらに,\((\alpha,\Psi)\) の収束が過程の収束にも対応する!6 だが,確率論的な意味付けに欠けるために,Lévy の表示の方をここでは用いる.
Lévy の表示の被積分関数 \[ e^{i(z|x)}-1-i(z|x)1_{\left\{B^d\right\}}(x) \] は大変複雑であるが,こうしないと \(\nu\)-可積分にならないのである.
\(\nu\) は \(O(\lvert x\rvert^2)\) 関数に関してならば \(0\) の近傍でも可積分であるから,\(e^{i(z|x)}\) から1次以下の項を \(0\) の近傍から取り去ることで可積分にしているのである.そのため,最後の項は \(1_{\left\{B^d\right\}}\) でなくとも, \[ c(x)=1+o(\lvert x\rvert)\quad(\lvert x\rvert\to0) \] \[ c(x)=O(\lvert x\rvert^{-1})\quad(\lvert x\rvert\to\infty) \] の2条件を満たすものならばなんでも良い.だが,取り替える度に1次の項 \(\gamma\in\mathbb{R}^d\) を変更する必要がある.
一般に \(\gamma\) はドリフトと呼んではいけない. \[ \int_{B^d}\lvert x\rvert\,\nu(dx)<\infty \] を満たす場合のみ, \[ f(z)=\exp\left(-\frac{(z|Az)}{2}+i(\gamma_0|z)+\int_{\mathbb{R}^d}\biggr(e^{i(z|x)}-1\biggl)\nu(dx)\right) \] と表示でき,この際の \(\gamma_0\in\mathbb{R}^d\) を ドリフト と呼ぶ.
逆に, \[ \int_{\mathbb{R}^d\setminus B^d}\lvert x\rvert\,\nu(dx)<\infty \] が成り立つとき, \[ f(z)=\exp\left(-\frac{(z|Az)}{2}+i(\gamma_1|z)+\int_{\mathbb{R}^d}\biggr(e^{i(z|x)}-1-i(z|x)\biggl)\nu(dx)\right) \] と表示でき,\(\gamma_1\) は \(f\) が定める確率分布の平均に一致する.7
Lévy 過程は,\(A:=A_1,\nu:=\nu_1,\gamma:=\gamma(1)\) について, \[ A_t=tA,\quad\nu_t=t\nu,\quad\gamma_t=t\gamma \] と表せる場合に当たる.
\(\{(A_t,\nu_t,\gamma_t)\}_{t\in\mathbb{R}_+}\) を加法過程の特性量とする.
このとき, \[ \widetilde{\nu}([0,t]\times B):=\nu_t(B),\qquad t\ge0,B\in\mathcal{B}(\mathbb{R}^d) \] は \(\mathbb{R}_+\times\mathbb{R}^d\) 上に測度を定める.
測度の族 \(\{\nu_t\}\subset\mathbb{M}(\mathbb{R}^d)\) と測度 \(\nu\in\mathcal{M}(\mathbb{R}_+\times\mathbb{R}^d)\) について,次は同値:
よって,任意の加法過程について, \[ \int_{\mathbb{R}^d}(1\land\lvert x\rvert^2)\nu_t(dx)<\infty \] が必要である.
Lévy 過程であるとき,定常増分であることが必要であるため,跳躍時刻は \(\mathbb{R}_+\) 上の一様な Poisson 点過程に従う必要がある.これより, \[ \widetilde{\nu}=\ell_+\otimes\nu \] と分解できる必要があり,この特性測度 \(\nu\) が Lévy 測度である.このとき,\(\nu_t=t\nu\) かつ \(\widetilde{\nu}(dsdx)=ds\nu(dx)\).
\(\{X_t\}\subset\mathcal{L}(\Omega;\mathbb{R}^d)\) を特性量 \(\{(A_t,\nu_t,\gamma(t))\}\) を持つ加法過程とする. \[ \eta(\omega,B):=\#\left\{t\in\mathbb{R}_+\,\middle|\,\begin{pmatrix}t\\X_t(\omega)-X_{t-}(\omega)\end{pmatrix}\in B\right\} \] を \(\omega\in\Omega_0\) 上で \(B\in\mathcal{B}(\mathbb{R}^+\times\mathbb{R}^d\setminus\{0\})\) に関して定める.
\[ \int_{B^d}\lvert x\rvert\,\nu_t(dx)<\infty,\quad t>0 \] を満たす場合,Poisson 補過程によらない,より簡潔な表示を持つ.
\[ \int_{B^d}\lvert x\rvert\,\nu_t(dx)<\infty,\quad t>0 \] が成り立つ場合,次が成り立つ:
本節の目的は,Lévy 過程の次の3分類の見本道の違いを理解することである:10
特性量 \((A,\nu,\gamma)\) を持つ Lévy 過程について,
Lévy 過程 \(X\) について,次の2条件は同値:
時刻 \(t>0\) までの跳躍回数を表す Poisson 過程 \[ N_t:=\int_0^t\int_{\mathbb{R}^d\setminus\{0\}}\eta(dsdx)\in[0,\infty] \] を考えると, \[ \operatorname{E}[N_t]=\int_0^t\int_{\mathbb{R}^d\setminus\{0\}}ds\nu(dx)=0. \] すなわち,\(N_t=0\;\;\text{a.s.}\)
Lévy 過程 \(X\) ついて,次の3条件は同値:
1 \(\Rightarrow\) 2
任意の有限区間内でのジャンプ回数は有限回であるため,ジャンプ回数の Poisson 過程 \(N\) について,\(N_t\sim\mathrm{Pois}(t\nu(\mathbb{R}^d))\) の母数は有限である必要がある.特に \(\nu(\mathbb{R}^d)<\infty\).\(X\) に連続部分がないことを併せると,定理 1.5 より, \[ \operatorname{E}[e^{i(z|X_t)}]=\exp\left(t\int_{\mathbb{R}^d}\biggr(e^{i(z|x)}-1\biggl)\nu(dx)\right). \] これは \(\mathrm{CP}(t,\nu)\) の特性関数である.
2 \(\Rightarrow\) 1
こちらは省略する.
純粋跳躍確率過程であっても,B 型ならば,見本道は区分的定数にはならない.Gamma 過程(第 3.6 節)がその例である.
Lévy 過程の見本道は右連続であるから,\(\mathbb{R}_+\) 上トータルの跳躍回数は殆ど確実に可算回である.
\(\nu(\mathbb{R}^d)=\infty\) の場合は,有限区間上での跳躍回数も無限になる.
さらに,次のことが言える:
\(\nu(\mathbb{R}^d)=\infty\) とする.このとき,跳躍時刻は殆ど確実に \(\mathbb{R}_+\) 上稠密である.
\(\nu(\mathbb{R}^d)=\infty\) のとき, \[ T_\epsilon(\omega):=\inf\left\{t\ge 0\mid\lvert X_t(\omega)-X_{t-}(\omega)\rvert>\epsilon\right\} \] とすると, \[ \lim_{\epsilon\searrow0}\operatorname{P}[T_\epsilon\le t]=1. \] よって, \[ \lim_{\epsilon\searrow0}T_\epsilon=0\;\;\text{a.s.} \] これは,ある充満集合 \(\Omega_0\subset\Omega\) の上で,\(0\) が \(X\) の跳躍時刻の触点になることを含意している.
これと同様の議論を任意の \(s\in\mathbb{Q}\cap\mathbb{R}_+\) について繰り返すことで,ある充満集合 \[ \bigcap_{s\in\mathbb{Q}\cap\mathbb{R}_+}\Omega_s \] 上で,\(X\) の跳躍時刻の閉包が \(\mathbb{R}_+\) 上で稠密になることがわかる.
\(d=1\) で,殆ど確実に単調増加な見本道を持つ Lévy 過程を 従属過程 (subordinator) という.15
\(d=1\) とし,\(X\) を Lévy 過程とする.このとき,次は同値:
仮に \(A=0,\nu((-\infty,0))=0\) だが, \[ \int_0^1x\,\nu(dx)=\infty \] であったとする.
このとき,正なジャンプとドリフトしか持たないはずであるから,場合によっては単調増加過程になっても良さそうなものである.
しかし,このような過程が発散せずに well-defined であるということは,負の方向に無限に強いドリフトを持っており,これが正なジャンプを打ち消していることが必要である.
それ故,ジャンプの隙間では負方向のドリフトが競り勝ち,全体としては単調増加にならない.特に,任意の区間において単調増加にならない.17
Levy 過程 \(X\) について,
Gamma 過程は,拡散項もドリフト \(\gamma_0\) も持たない,純粋跳躍な従属過程である.
しかし,正のジャンプのみをもち,ジャンプだけで増加していく過程だからと言って,その見本道は区分的に定数ではない.
その Lévy 測度は \(\nu((0,\infty])=\infty\) を満たし,B 型に分類される.従って,\(\mathbb{R}_+\) の稠密部分集合上でジャンプしており,見本道は殆ど確実に,任意の点 \(t\in\mathbb{R}_+\) で非連続である.
Gamma 過程は元々,(Moran, 1959) によりダムの貯水量のモデルとして導入された.
見本道 \(X_\bullet(\omega)\) は,\(\mathbb{R}_+\) のある稠密部分集合 \(A\subset\mathbb{R}_+\) 上でジャンプしているとする:\(\overline{A}=\mathbb{R}_+\).
このとき,\(\mathbb{R}_+\) の任意の点で \(X_\bullet(\omega)\) は非連続である.
実際,任意の \(t>0\) を取り,ここで連続であるとすると,任意の \(t\) への収束列 \(\{t_n\}\subset\mathbb{R}_+\) について,\(X_{t_n}(\omega)\to X_t(\omega)\) が成り立つ必要があるが,\(t\) は \(A\) の触点でもあるので,これに収束する \(A\) の点列 \(\{t_n\}\subset A\) が取れる.これを特に,下から単調に収束するように取る:\(t_n\searrow t\).
しかし,\(\nu\) は平均を持つために有界変動ではあり,実際シミュレーションによって得る見本道を見ても,殆どのジャンプは目に見えない.
\(\mathbb{R}\) 上の Gamma 分布 \(\mathrm{Gamma}(\alpha,\nu)\) とは,密度関数 \[ g(x;\alpha,\nu):=\frac{\alpha^\nu}{\Gamma(\nu)}x^{\nu-1}e^{-\alpha x}1_{\mathbb{R}^+}(x) \] が定める分布をいう.\(\alpha\) をレート,\(\nu\) を形状パラメータというのであった.
\(\sigma\)-有限測度 \(\rho_0\in\mathcal{P}(E)\) と Lévy 測度 \(\nu:=\mathrm{Gamma}(\alpha,0)\),すなわち \[ \nu(dr):=\frac{e^{-\alpha r}}{r}1_{\mathbb{R}^+}(r)\,dr \] について,\(\lambda:=\rho_0\otimes\nu\) で定まる強度測度を持つ \(E\times\mathbb{R}_+\) 上の Poisson 点過程 \(\xi\) を Gamma 点過程 という.19
これは \[ \xi(B)\sim\mathrm{Gamma}(\alpha,\rho_0(B)) \] を満たす複合 Poisson 点過程である.\(\rho_0\) のことを形状測度ともいう.
\[ \Delta_n:=\left\{\begin{pmatrix}p_1\\\vdots\\p_n\end{pmatrix}\in[0,1]^n\,\middle|\,\sum_{i=1}^np_i=1\right\} \] を \(n-1\)-単体とする.21 この上に台を持つ,パラメータ \(\alpha\in(0,\infty)^n\) で定まる密度 \[ f(x)=\frac{\Gamma(\alpha_1+\cdots+\alpha_n)}{\Gamma(\alpha_1)\cdots\Gamma(\alpha_n)}x_1^{\alpha_1-1}\cdots x_n^{\alpha_n-1}1_{\Delta_n}(x) \] が定める分布 \(\mathrm{Dirichlet}(n,\alpha)\in\mathcal{P}(\Delta_n)\) を Dirichlet 分布 という.
ここで,\(E\) 上の Gamma 点過程 \(\xi\) は \(\rho_0(E)<\infty\) を満たすとする.このとき,\(E\) の分割 \[ E=B_1\sqcup\cdots\sqcup B_n \] \[ \rho_0(B_i)>0 \] に対して, \[ (\zeta(B_1),\cdots,\zeta(B_n))\sim\mathrm{Dirichlet}(n,\alpha) \] \[ \zeta(-):=\frac{\xi(-)}{\xi(E)} \] が成り立ち,これは \(\xi(E)\) と独立である.
このことをふまえて,\(\rho_0\) が有限であるとき,ランダム確率測度 \[ \zeta(-):=\frac{\xi(-)}{\xi(E)} \] を Dirichlet 過程 という.22
しかし,\(\mathrm{Gamma}(\alpha,0)\) などという分布はなく, \[ \nu(\mathbb{R})=\int^\infty_0r^{-1}e^{-\alpha r}dr=\infty. \]
このとき,任意の \(\rho_0\) で測って正の測度を持つ集合 \(\rho_0(B)>0\;(B\in\mathcal{E})\) に対して,\(\xi\) は殆ど確実に無限個の点を \(B\) 内にもつ.23
しかし,\(\rho_0(B)<\infty\) ならば \(\xi(B)<\infty\) ではある.すなわち,ジャンプ幅も含めて足し合わせると,収束する.これは,\(\nu\) が平均を持つことによる: \[ \int_0^\infty r\,\nu(dr)=\alpha^{-1}. \]
\[\begin{align*} \xi(B)&=\int^\infty_0\int_Br\,\eta(dsdr)\\ &=\int_B\rho_0(ds)\int^\infty_0r\,\nu(dr)\\ &=\rho_0(B)\alpha^{-1} \end{align*}\]
一般に,\(\xi\) を \(\mathbb{R}^+\) 上の Lévy 測度 \(\nu\in\mathcal{P}(\mathbb{R}^+)\) を持つ一様な複合 Poisson 点過程,すなわち \(\ell_+\otimes\nu\) を強度測度とする \(\mathbb{R}_+\times\mathbb{R}^+\) 上の Poisson 点過程とすると, \[ Y_t(\omega):=\xi(\omega,[0,t]) \] で定まる過程 \(Y\) は,一般に Lévy 測度 \(\nu\) を持つ 従属過程 (subordinator) という.24
Lévy 測度 \(\nu\in\mathcal{P}(\mathbb{R}^+)\) を \[ \nu(dr):=\delta\frac{e^{-\gamma r}}{r}dr \] \[ \delta,\gamma>0, \] で与えたとき,付随する従属過程 \(\{Y_t\}\) を Gamma 過程 といい,\(\mathrm{Gamma}(\delta,\gamma)\) で表す.25
これは \(Y_t\sim\mathrm{Gamma}(\gamma,\delta t)\) を満たす Lévy 過程である.
目視できないジャンプが無数に存在することが窺える.
2つの独立な Gamma 過程 \[ X^+\sim\mathrm{Gamma}(\delta,\gamma^-),X^-\sim\mathrm{Gamma}(\delta,\gamma^+) \] に対して, \[ X^0_t=X^+_t-X^-_t \] と表せる Lévy 過程 \(X^0\) を 分散 Gamma 過程 という.26
分散 Gamma 過程は,オプション価格の対数のモデルとして,Brown 運動より柔軟なモデルとしても用いられる (Madan et al., 1998).
これは,Brown 運動の分散が Gamma 分布に従うとして得る過程であるとも見れる.実際,Brown 運動の時間を,Gamma 過程によって変換したものが分散 Gamma 過程である.
実際,Brown 運動 \(B\) とこれと独立な Gamma 過程 \(T\) について, \[ X^0_t=B_{T_t} \] と表せる.27
すなわち,安定分布とは, \[ Z_n:=\frac{\sum_{i=1}^nY_i-b_n}{a_n} \] という形の,独立同分布確率変数の正規化された和の列 \(\{Z_n\}\) の分布収束極限として現れ得る分布の全体を指すことになる.29
また,\(a_n\) は \(a_n=n^{1/\alpha}\) という形に限り,この \(\alpha\in(0,2]\) を 安定指数 という.
安定指数 \(\alpha\in(0,2)\) を持つ安定分布の Lévy 測度は非有限であり,平均も持たない.
\(\mu\in\mathcal{P}(\mathbb{R}^d)\) を \(\alpha\)-安定分布とする.このとき,その Lévy 測度 \(\nu\) について,次は同値:
次も同値:
安定分布は無限可分であるため,Lévy-Khintchin 分解を通じた特性関数の形が特徴付けられる.
中でも,(回転)対称な安定分布は特に簡単な表示を持つ:
\(P\in\mathcal{P}(\mathbb{R}^d)\) は回転対称であるとする.このとき,その特性関数 \(\varphi\) について次は同値:
この \(\alpha\) を 安定指数 という.
\(a_n\) は従って,中心極限定理を実現するために必要なスケーリングレートを表す.
このことは,一般のエルゴード的な定常過程に対して一般化できる:32
\(\{X_n\}\) を \(\alpha\)-撹拌的な定常過程,\(\{a_n\}\subset\mathbb{R}^+\) を発散列とし, \[ \frac{1}{a_n}\sum_{j=1}^nX_j-b_n \] は弱収束するとする.この極限分布は安定分布になり,安定指数を \(\alpha\) とする.
このとき,(Karamata, 1933) の意味で緩変動な関数 \(h\) に対して,\(a_n=n^{1/\alpha}h(n)\) と表せる: \[ \lim_{n\to\infty}\frac{h(tn)}{h(n)}=1\quad(t>0). \]
安定指数 \(\alpha\) を持つ回転対称な安定分布 \(Y\) は自己相似性を持つ.
一般に,Hurst 指数 \(H>0\) に関して自己相似的 (self-similar) であるとは,任意の \(a>0\) について \[ (Y_{at})\overset{\text{d}}{=}(a^HY_t) \] を満たすことをいう.
安定指数 \(\alpha\) を持つ回転対称な安定分布 \(Y\) については,\(H=\alpha^{-1}\) と取れる.
Brown 運動は \(H=1/2\) について自己相似である.
また,自己相似な Lévy 過程は,狭義の安定過程に限る.33
\(\alpha\in(0,1)\) の安定指数を持つ安定過程は,従属過程になる.34
Lévy 分布 \(\mathrm{Levy}(c):=\mathrm{IG}(c^{1/2},0)\) とは,密度 \[ f(x;c):=\sqrt{\frac{c}{2\pi}}x^{-\frac{3}{2}}e^{-\frac{c}{2x}}1_{\mathbb{R}^+}(x) \] を持つ \(\mathbb{R}\) 上の分布をいう.
これは次の特性関数を持ち,安定指数 \(\alpha=1/2\) を持つ非対称な安定分布である: \[ \varphi(u)=\exp\left(-\sqrt{c\lvert u\rvert}\biggr(1-i\operatorname{sgn}(u)\biggl)\right). \]
安定指数 \(1/2\) の安定従属過程 \(T\) は Lévy 従属過程 とも呼ばれ, \[ T_t\sim\mathrm{Levy}(t^2/2) \] を満たす.
これは,1次元 Brown 運動の到達時刻 \[ T_t:=\inf\left\{s>0\mid B_s=\frac{t}{\sqrt{2}}\right\} \] の過程として現れる.
Lévy 過程は逆正規過程の特殊な場合であり,これは一般の Gauss 過程の到達時刻の過程として現れる.36
\(\{\tau_t\}_{t\in\mathbb{R}_+}\) を安定指数 \(\alpha\in(0,1)\) を持つ安定従属過程とする.
これと独立な Lévy 過程 \(X\) に対して,従属化 \[ t\mapsto X_{\tau_t} \] は再び Lévy 過程である.
特に,\(X\) を Brown 運動 \(B\) とすると,\(B_{\tau}\) は安定指数 \(2\alpha\) を持つ安定過程になる.
例えば \(\tau_a\) として \[ T_a:=\inf\left\{t\in\mathbb{R}_+\mid B_t=a\right\} \] と取ると,これは安定指数 \(1/2\) を持つ安定従属過程(Lévy 従属過程)の修正である.38
これより,各 \(a\in\mathbb{R}_+\) への到達時刻で止めた Brown 運動の過程 \(a\mapsto B_{T_{a+}}\) は対称な Cauchy 過程になる.
Cauchy 過程は安定指数 \(\alpha=1\) を持つ狭義の対称安定過程である.39
拡散項を持たないが,Lévy 測度は平均を持たず(命題 4.1.2),C 型の Lévy 過程である.
すなわち,殆ど確実に,任意の区間上で有界変動でない.
(Nualart and Nualart, 2018, p. 158) 定義9.1.1,(Sato, 2013, p. 3) 定義1.6,(Rocha-Arteaga and Sato, 2019, pp. 12–13) 定義1.31に倣った.(Protter, 2005, p. 20) では(2)の\(D\)-過程という部分がないのみで,定理30 (Protter, 2005, p. 21) で常に\(D\)-修正が取れることを示している.(Le Gall, 2016, p. 175) 6.5.2節も同様の取り扱いである.(伊藤清, 1991, p. 306) は時間的一様性を所与のものとはせず,(1), (2), (3), (5)のみをLévy過程の定義としており,さらに(4)も満たすものを 一様Lévy過程 という.(Baudoin, 2014, pp. 89–90) 定義3.40では(5)がない.(Böttcher et al., 2013, p. 14) 例1.17では(1),(2)がない.(Osswald, 2012, pp. 258–259) は(1), (3), (4)を定義としている.(Applebaum, 2009, p. 43) は(1), (3), (4), (5)を定義としている.(佐藤健一, 1990) では全く同じものを加法過程と呼ぶが,(佐藤健一, 2011) は完全に一致する語用法をする(加法過程に確率連続性を課している点を除く).↩︎
(Sato, 2013, p. 47) 定理9.1 参照.↩︎
(Sato, 2013, p. 51) 定理9.7参照.↩︎
(Dudley, 2002, p. 327) 定理9.8.3,(Sato, 2013, p. 37) 定理8.1,(Rocha-Arteaga and Sato, 2019, p. 11) 定理1.28,(Baudoin, 2014, p. 91) 定理3.46,(Applebaum, 2009, p. 29) 定理1.2.14 など参照.↩︎
Gauss 共分散の用語は (Sato, 2013, p. 38) 定義8.2.Khintchine 測度は (Loéve, 1977, p. 343),(Applebaum, 2009, p. 31),(Böttcher et al., 2013, p. 33),(Baudoin, 2014, p. 92) など.↩︎
(Sato, 2013, p. 39) 注8.4.↩︎
特性測度の名前は (Revuz and Yor, 1999, p. 478) 演習 XII.1.18 など.命題は (Sato, 2013, p. 53) 注9.9も参照.↩︎
(Sato, 2013, p. 120) 定理19.2より.(Protter, 2005, p. 31) 定理42 は Lévy 過程に限って示している.(1)は (伊藤清, 1991, p. 313) 補題5.3でも解説されている.(Protter, 2005, p. 26)定理35も参照.↩︎
この分類は (Sato, 2013, p. 65) 定義11.9に倣った.↩︎
(Sato, 2013, p. 140) 定理21.9 参照.↩︎
(Sato, 2013, p. 135) 定理21.1.↩︎
(Lowther, 2011) 定理1,(Sato, 2013, p. 135) 定理21.2.↩︎
(Sato, 2013, p. 136) 定理21.3.↩︎
(Applebaum, 2009, p. 52),(Baudoin, 2014, p. 95) 定義3.50,(Sato, 2013, p. 137) 定義21.4,(Iacus and Yoshida, 2018, p. 171) に倣った.(Kingman, 1992, p. 88) 8.4節,(Last and Penrose, 2017, p. 156) 例15.7 は命題の条件2の方を定義に用いている.↩︎
(Sato, 2013, p. 137) 定理21.5.↩︎
(Sato, 2013, p. 138) も参照.↩︎
(Lowther, 2011) 定理2,(Sato, 2013, p. 140) 定理21.9.↩︎
定義は (Last and Penrose, 2017, p. 155) 例15.6 に倣った.↩︎
(Ghosal and van der Vaart, 2017, p. 562) 命題G.2.(i),(Last and Penrose, 2017, p. 163) 演習15.1,(Kingman, 1992, pp. 92–) 9.2節.↩︎
\(n=2\) を取ると1単体(線分),\(n=3\) と取ると2単体(三角形)を得る.↩︎
(Kingman, 1992, p. 93),(Ghosal and van der Vaart, 2017, p. 59) 定義4.1.↩︎
\(\lambda(B)=\rho_0(B)\nu(\mathbb{R})=\infty\) となるためである.(Last and Penrose, 2017, p. 163) 演習15.2も参照.↩︎
(Kingman, 1992, p. 88) 8.4節,(Last and Penrose, 2017, p. 156) 例15.7 などの用語法.一般に subordinator とは,単調増加な Lévy 過程をいう (Sato, 2013, p. 137) 定義21.4,(Baudoin, 2014, p. 95) 定義3.50,(Iacus and Yoshida, 2018, p. 171).これは,時間変数に関する変数変換を subordination と呼び,その際の変数変換に使えるためである.↩︎
記法は (Iacus and Yoshida, 2018) による.(Applebaum, 2009, pp. 54–55) 例1.3.22,(Protter, 2005, p. 33) 例4も参照.↩︎
(Lowther, 2011),(Applebaum, 2009, p. 59) 例1.3.31 も参照.↩︎
(Revuz and Yor, 1999, p. 116) 定義III.4.1,(Sato, 2013, p. 69) 定義13.1,(Shiryaev, 2016, p. 416) 定義3.6.2,(Loéve, 1977, p. 338).↩︎
(Shiryaev, 2016, p. 416) 定理3.6.3 も参照.↩︎
(Sato, 2013, p. 80) 命題14.5.↩︎
(Sato, 2013, p. 86) 定理14.14.(Shiryaev, 2016, p. 419) 定理3.6.4,(Loéve, 1977, p. 339),(Dudley, 2002, p. 328) 定理9.8.4 は \(d=1\) の場合.↩︎
(Ibragimov and Linnik, 1971, p. 316) 定理18.1.1 も参照.↩︎
狭義の安定過程とは,\(b_n\equiv0\) と取れることをいう (Sato, 2013, p. 69) 定義13.1.(Embrechts and Maejima, 2002),(Applebaum, 2009, p. 51) 例1.3.14 も参照.↩︎
(Revuz and Yor, 1999, p. 116),(Sato, 2013, p. 138) 例21.7,(Applebaum, 2009, p. 53) 例1.3.18 も参照.↩︎
(Applebaum, 2009 @/53) 例1.3.19 も参照.↩︎
(Applebaum, 2009, p. 54) 例1.3.21 も参照.↩︎
(Revuz and Yor, 1999, p. 116),(Rogers and Williams, 2000, p. 133) も参照.↩︎
(Revuz and Yor, 1999, p. 107) 命題III.3.9 も参照.↩︎
(Sato, 2013, p. 87) 例14.17.↩︎