総研大5年一貫博士課程・中間評価
2025-01-10
モンテカルロ法は統計物理学において系の平衡状態のシミュレーションに用いられますが,ベイズ統計においても事後分布を「未知のハミルトニアンを持った系の平衡分布」とみなすことでモンテカルロ法によりシミュレーションすることができます.
これを実行するアルゴリズムを,統計学では マルコフ連鎖モンテカルロ法 (MCMC: Markov Chain Monte Carlo) と呼びます.
多くの既存の MCMC は,平衡分布からのサンプリングに平衡分布にある物理系のダイナミクスを模倣して行います.Langevin Monte Carlo などはその代表であり,ダイナミクスは拡散過程になります.
しかし,自然が平衡状態に至るのは必ずしも速いでしょうか?コーヒーに砂糖を溶かす際,我々は砂糖粒子の拡散にまかせるのではなく,スプーンで混ぜます.同様の仕組みを取り入れることで,既存手法から効率性をさらにあげることができます.
その第一歩が 非対称性 であり,この性質をもつアルゴリズムの提案と計算複雑性の解析,そして大規模で複雑なデータへの応用を行なっています.
ベイズ統計が最も力を発揮する設定は,階層モデリングやノンパラメトリックモデリングなどの複雑なモデルです.